ECO-SCOP工法の開発経緯

【取組みの背景】

・2014(平成26)年4月で含鉛下塗塗料のJIS規格が廃止、平成19年度から鉛や鉛化合物及びクロム含有顔料の使用も中止され、また防食塗料の製造が昭和41(1966)年から昭和47(1972)年までの間に塩化ゴム系塗料の一部にPCBの含有が認められている。

・2001(平成13)年に「PCBの特措法」が制定され7月施行。PCB汚染廃棄物の処理期限は、高濃度汚染物等は2023(令和5)年3月まで、低濃度汚染廃棄物等の処分は2027(令和9)年3月までとされている。

・このような社会的背景の中、特に有害物質を含む塗替え塗装工事や鋼構造物の老朽化による改修(補修・補強)工事などで、周辺環境の有害塗膜飛散による 汚染や騒音、臭気などに配慮するとともに、排出される有害な産業廃棄物の適正な処理が求められている。

技術概要(アブストラクト)

 分析用途の塗膜採取する従来技術は、一般的な方法として素地調整2種が用いられるが、本技術の採取用具を用いることで、塗膜の採取コスト、作業工程と日数を各段に低減され、塗膜に含む有害物質等から作業員の安全と周辺環境の汚染及び汚染廃棄物の発生量が低減される。

(1) 新規性について(従来技術と比較の改善)

・採取用具はシンプルな構造で簡易に取り付けができ、仮設足場や養生設備を必要としない。

・採取用具の取付けは容易で、従来技術と比較して、有害物質を含む分析塗膜を少ない工程で短い作業時間で採取できる。

・採取用具の外に塗膜粉じんの発生がなく、防護衣や防護具を用いることもなく作業安全性も高い。従来技術と比較して二次的汚染廃棄物の発生量を低減できる。

・採取の用具を用いることで、作業時の有害塗膜粉じんの飛散や拡散がなく、従来技術の比較して周辺の環境汚染防止の効果は各段に高い。

・従来技術は素地調整の熟練経験を必要とするが、採取用具による塗膜採取は、特殊な経験や技能を有することなく、安全作業が確保できる。

・採取用具で採取した塗膜の分析試料の品質は、床面等に飛散・堆積した塗膜をかき集める従来技術の方法と比較し、同一条件の採取ができ、分析塗膜として一定の品質が確保できる。 

(2) 期待される効果(新技術活用のメリット)

 ・採取用具を用いることで、塗膜採取及び回収の作業工程、日数とコストを低減できる。

・採取用具を用いることで、有害塗膜粉じん吸引の事故防止など作業員の安全確保できる。

・採取用具を用いた場合、降風雨による塗膜粉じんの流失や飛散がなく、周辺環境汚染の防止効果が高い。

・有害塗膜を採取する工具は、主に手工具での採取で機械騒音による周辺環境への影響を与えない。

・小面積や構造的要因の条件下でも分析用途の塗膜の採取効率が各段に高い。

・採取用具の容積は小さく、従来技術と比較して二次的汚染廃棄物量が低減される。 

(3) 適用可能な範囲

 ・塗装構造物で、一般の塗装系及び防食塗装系が行われている鋼構造物及び建築構造物。

(4) 特に効果の高い適用範囲

・塗装系に有害物質等が含有されている塗装系の塗膜採取。

・有害物質を含む塗膜除去後の塗替え塗膜の確認検査。 

・構造物の局部塗膜除去作業。
 
・高所箇所や高架橋、誇線橋など時間的制約条件下で仮設備等の設置が困難な鋼構造物。 

(5) 何についての技術か

 構造的な諸条件で限られた面積や部位から、塗膜を採取するための専用用具(特許番号第6586673号)を塗装面に取付けるて用いる事で分析用途の塗膜を採取し、分析塗料(試料)を高い品質で確保してするとともに、周辺環境汚染の防止と二次的汚染廃棄物を低減し、塗膜分析に必要量の塗膜を採取及び回収する工法。

(6) 従来技術の対応

 ・従来技術の塗膜採取の方法は、素地調整2種を用いる為に仮設足場と飛散防止の養生設備工を設置し、関係法令で定められた保護衣や保護具を着用して作業の安全を確保している。従来工法は、二次的な汚染廃棄物の発生も多く、特別管理産業廃棄物の保管や処理及び作業工程や日数も多く、経費も増大する傾向にある。

(7) 公共工事の適用

 ・橋梁建設等の維持管理等で用いられる塗替塗装や構造物補修の維持改修、鋼構造物の廃棄処分など公共構造物のインフラ維持計画を策定に必須とされる調査項目で、塗膜の有害物質含有の判定のために必要な分析塗膜の試料採取及び回収の作業方法として適用される。 

(8) 活動状況と活用の効果

 ・令和3年までに、北海道内外の鋼道路橋の分析用途の塗膜採取及び回収工法を約3,000箇所以上の実績を有している。

・防食塗装系に含まれる有害物質の内容や含有濃度が的確に把握でき、鋼道路橋の維持管理の改修・補修及び廃棄処分の補修設計や計画作成時に含有されている有害物質に最も適した安全計画策定や事前計画策定など、補修設計上の問題点などの提起が容易になる。